石北研の研究コンセプト
「蛋白質の根底に横たわる普遍的な
メッセージを分子構造から抜き出す」
生体の最小機能単位である蛋白質は、僅か20種類のアミノ酸から構成されるにもかかわらず、バラエティに富んだ構造をしています。そしてその構造に応じて、電子伝達、物質輸送、センサー、抗体など様々な機能を有しています。私たちは、蛋白質の分子構造を手がかりに、その分子機能とメカニズムを理論的手法により明らかにしようと研究をしています。複雑な分子構造からその機能を理解することは一見すると大変そうですが、その機能は必ず基礎的な分子化学によって語ることができるはずです。単に数値を計算するのではなく、そこから蛋白質科学の根底に関わる普遍的なメッセージを抜き出すことを理念としています。たとえば、今はまだ謎の多い光合成のしくみを明らかにすることができれば、それを応用することにより「人工光合成」が実現できるかもれません。このように、工学的応用を見据え、機能性分子の設計思想を見いだすことも重要な研究課題です。同時に、研究の道具となる新しい理論化学手法の開発にも挑戦しています。
研究テーマ1光合成・光受容
植物の光合成では、光エネルギーを電子やH+(プロトン)の流れに変換し、さらに物質変換へとつなげます。光を受容し機能を発揮する種々の蛋白質によって触媒されています。また、私たちの目の網膜には、デジタルカメラの光センサーに対応する部品として,光を受けて信号を発する光受容蛋白質があります。これら光受容蛋白質の反応機構に分子化学、物理化学、光化学、無機化学、錯体化学等あらゆるツールを総動員してせまります。
研究テーマ2酵素・創薬系
酵素は私たちの体の中で生理的な反応を触媒している蛋白質です。その酵素に特異的に結合して酵素反応を阻害する物質が、いわゆるくすりです。私たちは、酵素反応がどのような機構で起こるのか、またどのような物質がくすりとして効果的に作用するのかを調べています。
研究テーマ3新しい理論化学手法の開発
私たちは、量子化学計算、静電相互作用計算、分子動力学計算、機械学習などの理論・計算手法を用いて研究をしています。それらの手法を工夫して組み合わせることで、分子のpKa・酸化還元電位・光吸収波長を計算で求めたり、分子間で起こる化学反応の速度を計算で求めたりする方法も開発しています。