次世代航空機材料の分子設計
2020.12.20 新しい理論化学手法の開発
劣化しない新しい材料の開発をめざして
高分子材料の利用期間の長期化、あわせて品質劣化特性評価の要求は年々増加する傾向にあります。航空機にも炭素繊維強化プラスチック(carbon-fiber-reinforced plastic: CFRP)として利用されている高分子材料も例外ではありません。CFRPは強度が高く、耐摩耗性、熱的寸法安定性に優れる反面、エポキシ樹脂が劣化しやすい、といった欠点も存在します。
高分子材料の劣化に関わる因子として一般に、光、熱などが挙げられます。その中、航空機複合材部品に利用されるエポキシ樹脂成分の太陽光による長期的劣化は、1)分子構造による光吸収、2)ラジカルの発生、3)酸化反応による新たな官能基の生成、といったメカニズムで進むと提唱されています。このように、外見からは判断できない局所分子構造変化が劣化のトリガーであることが知られています。つまり、劣化を根本的に抑制するには、1)劣化のトリガーとなる局所構造変化・分子修飾の仕組みを分子レベルで明らかにし、その上でそれらを抑制するような材料設計が必要となってきます。
私たちは、「分子形状・エナジェティクス解析に基づく材料設計支援技術の開発」をめざし、特定の分子のみでなく様々な分子にも対応可能な汎用性の高い分子形状定量評価ツール、分子系エネルギー評価ツールの開発を目指しています。