「低障壁水素結合では水素結合ドナー・アクセプターのpKaが一致」。この事実は、さすがに多くの方にも当然のごとく受け入れられているようです。
photosystem IIでは酸化還元活性を持つチロシン残基TyrZとD1-His190が低障壁水素結合を持つことは、石北研究室によって世界で初めて証明されました(論文)。
TyrZ…D1-His190低障壁水素結合ペアは、水分解・酸素発生触媒部位Mn4CaO5錯体から電子を引き抜き、反応中心クロロフィルP680へ渡す役割をします。すなわち酸化還元電位を持ちます。
低障壁水素結合の電位については、今まで何一つ知られていませんでした。水素結合内でプロトンは自由に行き来できる、すなわちpKaは一定ですが、一方で酸化還元電位は一定なのでしょうか?
答えは否です。
低障壁水素結合の酸化還元電位が、低障壁水素結合内のH+位置によって変化すること、H+の位置を調節することで低障壁水素結合は電子ドナー・アクセプター機能をそれぞれoptimizeできること、これらは世界で初めて石北研究室が明らかにした事実であり、以下の論文に記載されています。引用してご活用ください。
Keisuke Saito, Manoj Mandal, and Hiroshi Ishikita*
Phys. Chem. Chem. Phys. 22 (2020) 25467-25473. doi: 10.1039/D0CP04265J
“Redox potentials along the redox-active low-barrier H-bonds in electron transfer pathways”
Journal Pubmed