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学生インタビュー[菅生 優 (M2), 千葉 義大 (M1)]

インタビューの目的:

石北研究室がどのような研究室なのか、知って貰いたいと思い、石北研に所属している学生さんに研究の面白さや意義を話して貰いました。また、コロナ禍での在宅ワークや通学についての状況も教えて貰いました。このインタビュー記事を見て、少しでも石北研に興味を持って頂ければと思います。今回は、その第二回です。

インタビューに応じてくれた学生 (敬称略):

菅生 優 (M2) (写真右)
千葉 義大 (M1) (写真左)

―――石北研究室ではどのような研究を行っていますか

千葉: 当研究室にあるスーパーコンピューターを使って、タンパク質の構造がどう変化するか、電子やプロトンがどう移動するかを解析して、機能の発現を調べることをしています。

実験データの点と点を、線で繋ぐ研究だと思っています。

確かに。実験だと、点と点(例えば、初期状態, 中間体, 終状態などの観測できる安定な状態)しかわからないことが多く、その間で何が起きているのか、想像するしかない時があります。これを、計算で確かなものにし、理解を深めることができるのが、計算科学の魅力ですね。

―――具体的にどのような研究を行っているのか、教えてください。

菅生: 実験で直接的に観測することが困難な、水素イオンの動きを見ています。

どの方法で見ていますか?

菅生: 例えば、プロトン移動の場合、水素結合のドナーからアクセプターへ、水素原子を少しずつ移動させ、エネルギーを計算します。この手法で面白い点は、水素原子がドナーとアクセプターのどちらに存在しやすいか?というのが、わかる点です。

それは面白いですね。決して構造を眺めているだけではわからないことですね。

菅生: はい。アクセプター側に水素がいるときの方が、エネルギーが低くなる場合は、プロトン移動が起こります。障壁の高さも重要で、障壁が低いという事は、それだけスムーズにプロトン移動が起こるという事を意味します。

障壁の高さは、実験だと、反応速度の温度依存性の測定(アレニウスプロット)をしますが、実際にどの箇所で、どんな反応が起きているのかは、考察に委ねられます。

菅生: 計算だと、気になったところを直接的に測定できるから、わかりやすいです。障壁が高すぎたり、アクセプターに水素原子を移動させたときに、エネルギーが高いと、「あ、いかないんだ」とわかります。

なるほどです。では、そもそも、なぜ、水素イオンの動きを見たいのでしょうか?

菅生: 水素イオンは、タンパク質の機能の根幹の一つなので、詳しく調べる必要があります。

具体的には、どのようなタンパク質での、水素イオンの動きを見ているのでしょうか?

菅生: 光合成にかかわるタンパク質であったり、人の体内にある解糖系に関係するタンパク質の中で動く、水素イオンを見ています。

なるほど。光合成だと、植物の発育や人工光合成にかかわりそうです。人だと、病気の治療などにも、関係しそうですよね。どちらも、重要なタンパク質を扱っているのですね。

千葉:ロドプシンというタンパク質を研究しています。ロドプシンは、人の目にもある普遍的なタンパク質なのですが、最近発見された新しいタイプのヘリオロドプシンというタンパク質を研究しています。このロドプシンは、構造はわかっているのですが、機能はわかっておりません。現在報告されている構造を用いて、水素イオンがどのように移動するか、そして、その水素イオンの移動が、どのような構造変化を起こすのか、その構造変化からどのような機能を持っているのか、を推定する研究を行っています。

ヘリオロドプシンは新しいタイプのロドプシンということですが、理論化学計算で挑もうとしていることは、どのようなことなのでしょうか?

千葉: 実は、ヘリオロドプシンは、かなり多くの種類(古細菌、原核、真核)が持っているタンパク質ということがわかっており、生物が生きるのに、極めて必要なタンパク質であるということがわかっています。にもかかわらず、実験でも機能がはっきり証明されていないのが現状です。実験ではなかなか謎を解明できないということで、理論化学の観点からこの謎に挑戦しています。

実験で機能が解明されてないという点、非常に興味がそそられますね。やりがいがあります。

―――研究の面白さについてご説明をお願いします。

菅生: 上手くいかないことも多いです。であるので、上手くいったときは、研究成果が出たときは、面白いです。研究成果が出てなくても、研究を楽しいと思える人は、研究に向いているかもしれませんね。

千葉: 機能がわかっていないので、そもそも、どこからどこにプロトン移動が起きるのかもわかっていませんでした。さらには、水素原子がどちらに向いているか、わかっていません。例えば、水分子は、2つ水素原子を持っているが、それが、水の酸素原子に対して、どのような向きで結合しているか、わかりません。そこで、私は、あらゆる可能性を考えて、9つのパターンがあると考えました。結果、1つのパターンが実験結果(結晶構造)を合理的に説明するパターンだと結論を出しました。そのあと、実際に、プロトン移動が起こるのかを計算しました。それで、プロトン移動が起こりそうな経路を出しました。初めて経路がわかったときに、面白さを感じました。また、このような仮説、推論し、検証するという、一連の流れが、非常に研究が面白い感じたところです。

なるほどです。手間が掛かりますが、苦労した分、「これだ!」と思える結果が得られたときの喜びは一入ですよね。

―――研究室に入ってどのような変化がありました。コロナ禍という事で在宅ワークの時があります。在宅ワークや通学の状況について、教えてください。

千葉: ずっとコロナ下でしたので、家でも研究を行っていました。なので、生活の変化はありませんでした。授業のときとは違って、もっと夜遅くまで研究するようになりました。

菅生: コロナがはやる以前は、授業のために、満員電車で、大学に通っていました。今は、オンラインで研究ができるので、自宅で作業することが多いです。

研究室に入ると、夜遅くまで熱心にする人も多いですよね。家が遠い人は、在宅ワークの利点が大きいですね。

―――どんな人が石北研にお勧めですか?

菅生: リモートで行っているときは、家にいるより、研究室にいるという感じが強くなっています。化学系に進みたいけど、リモートで行いたい人は、おすすめです。新人は、慣れるまでは大学にくるようになっているので、それでも大丈夫な人でしょうか。

最後に

インタビューに応じて頂きました、菅生君、千葉君、ありがとうございました。研究は、「うまくいかない事があるけど、新しい発見に出会えたときに面白いと感じる」という点が、特に印象的でした。全部がうまくなんて、簡単なら研究にならないでしょうから、そうなのだと思います。難しいからこそ、挑戦したくなり、挫折することもありますが、それでも、めげずにやっていると、思いがけない瞬間に、良い結果が得られる。そんな体験をしている印象を受けました。

コロナが酷いときは、全員がリモートで行っていましたが、徐々にその状態も緩和されてきました。家が遠い人はリモートでできますが、最初は大学に来て同期や先輩、スタッフ達と、話をしながら研究できると良いですね。どんな様子で研究をしているのか、研究室見学が一番なので、少しでも興味がありましたら、来てみてください。

インタビューワー/記事 野地 智康