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学生インタビュー [辻村 真樹 (D1)、神田 知樹 (M2)]

石北研究室がどのような研究室なのか、知ってもらえたらと考え、石北研に所属している学生さんに研究の面白さや意義を話していただきました。また、コロナ禍での在宅ワークや通学についての状況も教えてもらいました。

インタビューに応じてくれた学生 (敬称略):

辻村 真樹 (D1) [日本学術振興会 特別研究員 (DC1)] (写真左)
神田 知樹 (M2) (写真右)

―――石北研究室ではどのような研究を行っていますか。

辻村: 石北研究室では主にタンパク質を研究対象にしています。アミノ酸は20種類しかありません。にもかかわらず、タンパク質は、触媒、イオン輸送、分子や光センサーなど、その機能は多岐に渡ります。タンパク質の構造を元に、量子化学や統計力学的なアプローチでタンパク質の機能がどのように発現しているのかを解析しています。タンパク質を構成する原子の数は膨大なので、普通のパソコンでは計算が終わりません。石北研では、大型計算機を駆使して大規模な計算を現実的な時間で終わらせることができます。

確かに。タンパク質の機能は、人工的作られた触媒などの性能を未だに凌駕することが多いです。我々は、まだまだタンパク質から学ぶことが多いという事ですね。

―――具体的にどのような研究を行っているのか、教えてください。

辻村: 僕は、人の目にも入っているロドプシンの研究を行っています。ロドプシンとはレチナールと呼ばれる色素を含む光を吸収するタンパク質です。光を吸収し、イオン輸送や光センサーとしての機能を持つタンパク質です。タンパク質内のレチナールの吸収波長がどのようにして決まっているのか?機能がどのようして得られるか?波長と機能の関係を明らかにする研究を行っています。

神田: 光合成の機能に関わるタンパク質である光化学系Iの解析を行っています。光化学系Iは光を吸収して光合成に必要な還元力(電子)を供給する役割を担っています。光化学系Iの内部には電子移動にかかわるパーツがいくつかあるのですが、その一つの鉄硫黄錯体の研究を行っています。鉄硫黄錯体のどの鉄が酸化還元応答するのか調べています。

動物の目にも入っているタンパク質や、植物が行う光合成に関わるタンパク質の研究など、幅広いですね。全く異なるタンパク質の研究なのに、一つの研究室でそれらを研究対象にし、双方の研究を理解するのに必要な知識は共通しているのは、面白い事ですね。理論研究の強みがわかりました。

―――研究の面白さについてご説明をお願いします。

神田: 太陽電池の開発がされていますが、その性能の評価として重要なのは、光子を電子に変換する反応の効率です。光合成も太陽光で電子を移動させる反応です。光化学系Iはこの効率がほぼ100%なので、その機能解明を行うのが非常に面白いです。どうして高効率なのかは未だにブラックボックスです。鉄硫黄錯体のどの鉄が酸化還元応答するのか調べることは、その機能解明につながります。光合成以外の他のタンパク質でも鉄硫黄錯体が使われているので、鉄硫黄錯体の理解は光合成に留まりません。生物の生命活動に関わるタンパク質の機能の理解を深める重点な研究の一つだと考えています。

辻村: ロドプシンは光遺伝学に使われるタンパク質として注目されています。光遺伝学とは、光に応答するタンパク質を任意の神経細胞に発現させ、特定の細胞のみ光で活性/抑制させる手法です。光遺伝学は、脳機能の解明にも注目されている方法で世界中から注目されている研究です。しかし、そもそも光をロドプシンが吸収して、どのようにしてイオンが輸送されているのか、わかっていません。それを明らかにすれば、もっと、応用できると考えています。

より豊かな社会の実現に必要な研究にも関係していることがわかりました。ありがとうございました。応用も期待できるという意味でも、今の基礎研究はとても重要だと思いました。

―――研究室に入ってどのような変化がありました。

辻村: 学部のときの授業の内容が、なにに使えるのかわからなかったが、研究に使えることがわかりました。最先端の研究内容にも、授業で得た知識が使えました。研究を行って初めて、授業の大切さがわかりました。もっと真面目に受けとけばよかったです。笑

神田: 授業は決められた時間に行かなければならなかったが、研究は自分のペースでできるのが、良いところです。ただし、自己管理が重要で、より自主性が求められます。

なるほど、研究活動は受け身ではなく、主体的に活動していくことが重要なのですね。授業で受けた知識を、今ここで総動員して研究に挑むという感じでしょうか。難題に挑むこそ楽しいということもありますよね。

―――コロナ禍という事で在宅ワークの時があります。在宅ワークや通学の状況について、教えてください。

辻村: B4の頃は、研究室でみんなで話ができて、楽しかったです。在宅ワークになり、通学時間が無くなり、疲れにくくなりました。研究は今の状況の方が進んでいると思います。一方で、運動不足になりがちなので、ランニングしています。18時ぐらいから、4 km, 20 min走っています。朝も、散歩しています。

神田: B4の一番最初に、緊急事態宣言がでました。通学がないので、良いです。一方で、自分のやる気次第で研究の進み具合が大きく変化する。運動不足解消はおこなっていません。

在宅ワークの人は自己管理が大事という事ですね。徐々に対面でも授業も増えてきているので、コロナ禍以前に様に大学で研究活動できるようになると良いですね。

―――どんな人が石北研にお勧めですか?

辻村: 理論、理屈を考えたりするのが好きです。分子レベルで機能も持つのに興味をもっていたので、やりたいことができています。機能を持つ分子に理論を使って、明らかにするのが、面白いと感じています。

神田: 理由を考えるというのが好きなので、理論化学で、その機能がどのようにして発現しているのか、それを知りたいと思ったので、志望しました。

ブラックボックスでもいいから、効率や性能を向上させる研究もあります。石北研はむしろ、ブラックボックスの中に光を当て、中を覗こう、ひっくり返そうとしている訳ですね。どんな仕組みでこの素晴らしい機能を獲得しているのか。そんな謎を知り、解明したい人が向いているのかもしれませんね。

最後に

インタビューに応じて頂きました、辻村君、神田君、ありがとうございました。研究を心から楽しんでいるのが伝わってきて、とても話やすく穏やかな空気で話すことができました。在宅ワークもできますが、「大学でみんなと議論しならが研究をしていたのが、楽しかった」というのが特に印象的でした。色んな人と議論しながら楽しく研究ができる方が良いですよね。一日中座ってパソコンの画面に向かうので、適度な運動する時間を設けている学生もいました。ブラックボックスを使うより、その中を覗きたい人に魅力的な研究室かもしれません。とはいえ、研究室見学が一番なので、少しでも興味がありましたら、来てみてください。

インタビューワー/記事 野地智康 (助教)